3月15日のウチから持ってきた

3月15日のwktkウチから持ってきたでシゲちゃんが紹介した「スタッキング可能」読みました。

難しいって聞いてたんだけど、私が読んだ感想としては、新しい!と思いました。



簡単な言葉を使ってるのに社会を盛大に皮肉ってるところが気持ちよかったです。


読んだ後、さらに読み直したくなるへんにクセになる作品でした。



さてさてここでwktkでのシゲちゃんウチから持ってきたを振り返ってみたいと思います。

今日僕がウチから持ってきたのは松田青子さんの「スタッキング可能」という小説です。昨年1月に発売されたこの小説は各所で話題になりましていろんな方が絶賛してたし帯にもたくさんの方がコメントを書いていたので僕もずーっと気になっていたのですが時間が出来たのでようやく先日手を伸ばしました。
読んだ感想がですね、もぅなんじゃこりゃ!っていう。はっきりいってこんな小説は読んだことがないなっていう。もちろん面白いんだけど、面白いって素直に言えないこのもやもやみたいな部分があったりなんかして。それが僕の最初の感想でした。
単行本には6篇の物語が収録されてますが、まず最初にあるのがこのタイトルにもなってる「スタッキング可能」という話です。この話はとあるビルにあるさまざまなオフィスでの群像劇ですね。
一章ごとにエレベーターの階表示のイラストがあってそこがこう点滅してたりするのでビルだってことが想像できるような展開にはなってるんですが“スタッキング”っていう言葉がまずわかんないかもしれないですけどスタッキングっていうのは積み重ねることで。たとえばこう椅子や箱などスタッキングチェアなんて言いますけど同じものを重ねられるものを“スタッキング可能”ってことになりますね。というわけでそれはつまり同じものを重ねていけるしくみであり、言うなれば変わりがきくということでもあるのではないでしょうか。
そういうことをテーマにしたこの物語。キャラクターは全員匿名です。A田とかB野とかC川とか。またややこしいことにですね、A田もいればA山もいて、A村もいるんですよ。だけど同じアルファベットの彼らは全員みんな似てるんですね。…ていうか一緒じゃん!みたいな。で、同類なわけですよ。例えばお洒落をするために働く人。何を言ってるからわからない上司をオラウータンに見立てて戦う人。漫画にインスパイアされて生きる人。現実をコージーミステリーに見立てて生き抜く人、などなど。そういった人物の日常が絡み合って物語が進んでいきます。文章の中にもあるので一文というか、そのセンテンス読みますね。

「どこかのフロアからCの声が聞こえた。どのCが言ったんだろう。何人もいるからすぐには分からない。ま、どのCが言うこともだいたい同じだから。どのCでもいいだろう。どうしても同じようなキャラクターになってしまう」

ま、こういう事があるように、名前は違っても同じような人はどこの会社にもいてどのフロアにもいたりする。ということだったりするのであるんでしょうかね。つまりどこにいてどこにでも同じ、つまりどこにでも同じような人間がいて同じようなことが起きているという。僕は会社勤めをしたことがないんですがあるある、ありそうありそみたいなことが起きていてですね、“スタッキング”されてるわけなんです。そういう社会を皮肉に切り取りながらも彼らはそれぞれの世渡りを描いて行きます。
僕らから見た彼らはこうですけど、彼らから見た僕らはこうなんだよ?と、なんだか諭されている気にすらなりました。ほんとにそんなキャラクターそれぞれどこかに共感してしまったりする不思議で新しい小説です。その他にも…、マーガレット、マーガレットハウエルっていうブランドからきてるんですかね?「マーガレットは植える」っていうタイトルなんだけど、マーガレットはいろんなものを植えている話だったり、もうすぐ結婚する女の話であったり、「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」と化粧品の問題点に同盟を組んだ2人がリズミカルに問題点を列挙していく3篇が収録されていたりします。

どれも不思議で新しい、そして面白い文学作品になっております。
エンタメ小説ではないのでふだん読みなれてない人は少し分かりにくい部分もあるかもしれませんが、それでも読ませてしまう力強さもありますし、なぜか癖になる小説です。
これから会社勤めをする方、もしかしたらこれから会社勤めをする方特に楽しめるんじゃないでしょうか。

ということで僕がウチから持ってきたのは松田青子の「スタッキング可能」です。良かったら読んでください。

(ゴリさん:難しいねぇ…)
難しいっちゃ難しいのかもしれないんですけど、そういうものの方が残っちゃいますよね。
読んですっきりして、楽しかった!…でもそういう感覚もなるんですけど、なんじゃこれ?超楽しい…
(きいちゃん:ショッキング?ある意味ショックをうける…?)
それがわかりやすくないわけよ。誰かが死んだりとかそういう展開はなくてみんながあの上司はこういうこと言ってるけど私はこうしてて…ていうのをみんなの視点で描いてる。90ページくらいなのでひとつひとつは短いんですけど、「スタッキング可能」ていうタイトルはね。本当にあのー…面白いんですよ。あるあるみたいな。本当にあのー…責任とれる!面白いから、これは。本当に最近読んだ中で面白かったのでぜひぜひ読んでくださーい!

以上ウチから持ってきたでした。

たしかに、ふだん本を読みなれてない人は難しく捉えちゃいそうだけど、逆に本読みな人にとっては新鮮で楽しめる作品なんじゃないでしょうか。



こういう文章書けるのはすごいですね。


リズミカルなところも特徴的だと思います*1


でも、私気づかなかったです。同じアルファベットの名前の人は類似する点があったということに。そうだったのか…!!
再度、そういうところにも注目して読み直してみたいと思います。

*1:「ウォータープルーフ嘘ばっかり」って私も声に出して言いたくなった。そんな文章の心地よさを感じました。